残雪の上高地散策

2016年3月22日

 暖冬である。21日の午後、焼岳登山道入り口あたりをスノーシューハイクしたが、雪が浅い。この分なら、上高地はアイゼンさえあれば河童橋まで行けるだろう。少し歩けば汗ばむほどの好天で、日の入りの前には、アーベントロートに染まる穂高を堪能した。
 22日も雲一つない朝を迎えた。8時過ぎに中の湯温泉旅館の車で釜トンネル入り口まで送ってもらい、8時半頃にはトンネルに入った。冬期の上高地へは徒歩で入るしか手段がない。その出発点が釜トンネルで、勾配11パーセントというスキーコース並みの急坂を1300m登っていく。トンネル内は暗く、手持ちの明かりだけが頼りだ。寒さが緩むこの時期は各種工事の最盛期でもあり、工事用の許可車輌が轟音とともに通り過ぎていく。車輌が近づいてくる時のこの轟音は、何度経験しても不気味なものだ。
 トンネルを抜けると、道路には雪がなく、氷の上を歩くことはあってもアイゼンを使うことはなかった。難なく、9時過ぎには大正池に到着した。
トンネルを抜けてしばらく行くと、左手に焼岳が見えるようになる。 国交省の事務所の看板の先にある大きなカーブを右に回ると、突如、西穂から奥穂の稜線が目に飛び込んでくる。丸い雪山が丸山で、その右にあるピークが西穂独標。その右の一番高いところが西穂高岳の山頂になる。右に下がった先のピークが間の岳、台形が天狗岩、右肩上がりの大岩が畳岩で、ジャンダルムを越えて奥穂高岳(右手の白く平らな部分)に到る。
奥穂と前穂をつなぐ釣り尾根。その下部が岳沢だ。 大正池に穂高の銀嶺が映る。
池の畔に下りると、焼岳が水面に映り込む。 大正池の生みの親である焼岳から噴煙が上がっている。
 大正池の手前で工事車両は左に折れるので、そこから先は雪が深くなる。例年であれば、である。今回は、厚氷の上をこわごわ歩くことになった。大正池の畔へはスノーシューがなければズボッと足をとられるはずなのだが、こちらは固い圧雪状態で普通に歩くことができた。それでもそれなりには寒いようで、ペットボトルのスポーツドリンクを飲もうとしたら、中に氷の柱ができていた。
 大正池からは車道を離れ、圧雪の遊歩道を行くことにした。大好きな田代池で小休止をとり、河童橋まで3kmをのんびりと歩いた。2005年12月27日、初めて冬期の上高地に入った吹雪の日と同じコースを歩いている。吹雪の中をラッセルしたのもおもしろかったが、やっぱり青空の下の方が格段にいい。
 10時50分過ぎに河童橋に着いた。ここで1時間半ほど、実にゆったりとした満ち足りた時間を過ごした。昼食は、バーナーで持参の水を温めてカップラーメンを食べた。梓川の河原のベンチで穂高の雪山を正面に見つつ、そんなロケーションを独り占めにして食べるカップ麺は超高級食だ。食後にはハーブティーを楽しんだ。
 帰りは車道を歩き、午後2時30分に釜トンネルを通り抜けた。往復13kmのハイキングはこれにて終了。
田代池は、上高地の中でも特に好きなスポットだ。 池の畔に霜柱ができていた。そう言えば、我が家の周辺では見かけなくなったなあ…。
河童橋 河童橋の上からの眺め。梓川の向こうに雪の穂高。橋を渡った向こう岸にある河原のベンチでカップ麺を食べた。この風景を独り占めにして…。
河童橋と焼岳。 梓川と焼岳。
焼岳山頂と噴煙。 帰途、焼岳が望める道路脇の沢の残雪に立木が影を落としていた。
 この日は、お馴染みのしおり絵に宿泊した。いいお湯と素敵な料理とウマい生ビールに贅沢な刻を過ごし、雪景の余韻に浸った。



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